溜め息 第一部【完】






長い睫毛で丁寧に縁取られた鋭い瞳に自分が映る。


同性だというのに、この男の持つ雰囲気と美しさに不覚にも見惚れてしまう。


男としての魅力が凝縮されたような人間だと思った。


男の口から吐き出された煙がゆらゆらと揺れる。



「あいつは依存性の高い猛毒だ。」



まるで全てを知っているみたいな口ぶりの相手に、少し苛立ちを覚える。



「嫉妬?」



それが、初めて男に投げた言葉だった。


忘れた訳じゃない。

この男と憂李が唇を重ねていた光景は、未だに脳裏に焼き付いていた。


少なからず目の前の男に対抗心を抱いていた僕から視線を逸らす事のない男は、可笑しそうに声を漏らす。




「ククっ…嫉妬か。面白い事を言いやがる。」



ジュッと音を立てて消えた煙草の火種。




「嫉妬なんて可愛い物じゃねぇよ。」

「……っっ。」



胸倉を掴まれた事を認識した時には、既に端麗な顔が数センチの距離にあった。



「てめぇを今すぐ殺してやりたいくらいだ。」



僕を射抜く灰色がかった色素の薄い瞳。

狩りの際、獲物を狙う獣同然のそれに射抜かれ、本能的に怯みそうになる。


この男が何者なのか僕は知らない。


だけど、本能が訴えかける。




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