林檎ちゃんの、メランコリー【完】

メランコリー 6 /Karte XVII











空き教室から走り去って行く華奢な背中を追いかけようとした私は、背後から伸びて来た腕に抱き締められて制される。





「芽維君放して。」

「やだ。」

「だって、あの子にちゃんと謝らなくちゃ。」

「別に良いよ、梨岡なしおかさんに告白されるのこれで10回目だし。」

「じゅ、10!?!?」

「しかも彼女から直接、本当は僕とセックスフレンドになりたいだけだって言われてたし。」

「せっ……セックスフレンドって…。」





あんなに清楚な見た目をしていたのに?

全然想像できないよ。



セックスフレンドと云う大人な響きに頬を熱くする私とは裏腹に、芽維君は至って平静だ。


それどころか、綺麗に整っている顔を近づけて、そこに悪戯な笑みをぶら下げている。






「それより林檎ちゃん。」

「は、はい。」

「もう一回言って。」

「え?」

「さっきの言葉、もう一回言って。」

「うっ……。」

「ほら早く。」




距離を着実に詰めてくる妖艶な顔に耐え切れなくなって、瞳を逸らした私の全身は熱を孕んでいた。




「め、芽維君。」

「なーに?」

「私、芽維君の事が好きです。芽維君を愛してるみたい…きゃっ…。」





言い終わるのを待たずして引き寄せられた身体と、重ねられたおでこ。





「やっとだ。」

「芽維君っ。」

「やっと林檎ちゃんと両想いだ。」





グレイの瞳に涙を溜めて笑った芽維君は、今まで見てきたどの表情よりも飛び抜けて美しかった。






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