林檎ちゃんの、メランコリー【完】

メランコリー 2 /Karte VII








聞き覚えのあり過ぎるその声の主を反射的に探し始めたのは、どうやら私だけではないみたい。


ほとんど同じタイミングで視線を上昇させた芽維君は。





「げっ。」





視界で声の犯人を捕らえるなり、ポーカーフェイスをぐしゃりと崩して頬を引き攣らせた。


そんな表情も綺麗だから、芽維君は狡いよ。





「僕の林檎から離れろそこの猛獣。」





明らかに私の隣にいる彼目がけて投下された言葉が、ママが趣味で育てているお花が咲き乱れているお庭に響き渡る。



伸ばした視線の先。


二階のバルコニーから身を乗り出しているその人物は、双眼鏡を離して酷く端麗な顔を見せた。






「林檎~!お帰り~!早くお兄ちゃんにただいまのキスして~!!!!」

「ちょっ…何恥ずかしい事言ってるの!?!?」

「今そこ行くから待っててね!!!!」




ニヤニヤしてないで私の話を聞いてよもう!!!!



ご近所さんにまで聞こえんばかりの大声を放って、バルコニーから姿を消した相手に私の全身は羞恥心でこれでもかというくらいに火照っている。





0
  • しおりをはさむ
  • 236
  • 4157
/ 235ページ
このページを編集する