林檎ちゃんの、メランコリー【完】

メランコリー 3 /Karte IX










それは、どんなホラー映画よりも恐怖だった。





「何でっ……ふごっ…。」





呼吸するのも忘れて金魚みたいに口をパクパクさせながら絞り出した声を、あっさりと遮断する大きな手。


唇を塞がれたと気づいた時には、数センチ先に端正な顔が迫っていた。





「そんな声を出したらまるで僕が不審者みたいじゃない。」

「………。」

「僕に会えて嬉しくて思わず叫んじゃったの?本当に可愛いね林檎ちゃんは。」





首をひたすら横に振って応えてみても、相手の顔から笑顔が消える事はない。

怖すぎぃぃいいいい。




「でも少し黙ろうね。お巡りさんが来たらそっちも黙らせなくちゃいけなくて僕のお仕事増えちゃう。」





一体貴方は何者なの。


当然のように言ってのけたけど、警察官の口も塞ぐ気満々なご様子だよ。





「早起きが苦手なのにこんな時間から学校に行くなんて、どんな心境の変化があったのかなぁ?」

「………。」





彼の頬に伸びる睫毛の影と、よりいっそう吊り上がる口角。


放たれる声色こそ躍るように軽やかなのに、逆にそれすらも恐怖を倍増させる材料にしかならない。






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