ブロンドロンド

女の子が欲しい





高槻大翔の父は、高槻大志(ひろし)父が会社を立ち上げ、定年を迎えた時に社長を引き継いだ。
この地で有名な資産家の娘、華子とお見合いで強制的に結婚をさせられ、県内の一等地に、大きな家を建てた。
華子は、妊娠を望むも、なかなか子宝に恵まれず、不妊治療の末、長男「大翔」を出産。
順風満帆の日々が訪れるとおもっていた。

「おぎゃーおぎゃー」
生まれて3ヶ月になる大翔は、火がついたように泣く。

「あなた・・・少しは手伝ってください。」
華子は、大志に必死で訴えるが、「悪い、疲れているんだ。」と聞く耳を持たない。
そればかりか、「はやく泣き止ませろ」という。

「全然、泣き止まない・・・・・」

やっと、泣き止み眠れると思えば、大志は、華子の胸を触る。

「やめてください。」

華子は、拒否をする。

「ちっ」

大志は舌打ちをした。
・・・私がこんなに大変な思いをしているのに、この人は本当に自分勝手・・・・
大志のいないところで、華子はよく一人泣いていた。

華子は、昔から夢があった。それは、自分が女の子を産み、一緒に買い物へ出かけたり、料理を作ったり、おかし作りをしたり、とにかく男の子よりも女の子が欲しかった。
華子自身に男兄弟がいない為、男の子の育てかたも分からないし、乱暴だし、やんちゃだし、未知の存在であった。
正直、性別を聞いた時に、がっかりしたが、父になる大志は「跡取り」と喜んでいた。
しかし、妊娠したこと自体が奇跡である為、文句を言っている場合ではなかった。
二人目も、欲しいが妊娠する可能性も低いし、この先女の子が生まれる保証もない、何よりも旦那に体を触れられることが苦痛でならなかった。


大翔が、3歳になる頃、隣には、高槻家以上に大きな家の建設工事が始まった。
完成すると、高槻夫婦とさほど変わらない年齢の夫婦と、大翔と同じ年の人形のような可愛らしい女の子を連れて挨拶に来た。
それが、河合家 芽里の父母と芽里だった。その瞬間、華子は芽里に心を奪われた。

大志と、芽里の父 照史(あきと)は顔をあわせるなり、大志がへこへこと頭を下げ始めた。
取引先の社長であったからだ。

その後、両家はよくそれぞれの家に集まり、食事会を開いたり、旅行へいったりするようになる。
そこで、芽里と大翔も仲良くなって行った。

「芽里ちゃんは、本当に可愛いわね。女の子いいな〜〜」
華子は、芽里をうっとりしながら見る。

「あら、何いってるのよ大翔くんだってかわいいじゃない。顔もかっこいいから将来楽しみだわ〜それに、女の子は育てやすいっていうけれど、3歳にもなれば一人の女よ、口は達者だし、わがままだし、主人へのおねだり上手だし、どうしても一人娘だから、お姫様のように育ててしまってこの先が心配だわ。」
芽里の母、麻美子が答える。

「二人目は考えてないの?」

「私、今の仕事の地位を失いたくないの。だから、子供は一人で充分よ。まあ、私も主人も仕事ばっかりでさみしい思いをさせてしまっているのが少し心配なところなんだけどね。」
麻美子は、大学の教授で高学歴。給料も相当もらっている。一方の華子は、専業主婦だった。

「もし、芽里ちゃんがさみしい思いしているなら、うちにくるといいわ。一人も二人も面倒見るのは変わらないわ。」

「ほんとう?助かる!」

それからというもの、芽里は頻繁に高槻家に預けられるようになる。
ただ、それは華子の策略であった。

・ ・・芽里ちゃんが欲しい・・・このふわふわの長い髪、長い睫毛、くりくりとした大きい目、かわいいお洋服を着せて・・・

「ひろ君ママ・・・芽里、お手伝いするね。」
芽里は、華子のことを大翔の母なので「ひろ君ママと呼んでいた。芽里は、家事などの手伝いを進んでやり、気の利く子だった。
芽里は、家ではほとんどをお手伝いさんと過ごすことが多く、実の母親が家事や料理をしているところを見たことがなかった。会話もほとんどしない。ただ、金銭的に不自由はしない為、欲しいものを言えばなんでも買ってもらえたし、
わがままを言えばなんでもつき通された。

・・・パパ、ママ、私がほんとうに欲しかったのは、二人からの「愛情」だよ?

「芽里ちゃん。ありがとう。」
華子は、芽里の頭を優しく撫でた。

「ああ〜〜。ひろ君ママがほんとうのママだったらいいのに・・・・」
芽里は、ぼそっとつぶやいた。

「ありがとう。私も、芽里ちゃんが娘だったらうれしいわよ。」

「ねえ、芽里がひろ君ママの娘になる為には、ひろ君とケッコンすればいいんだよね。」
芽里は、笑顔で言った。

「そうだね。」
華子は、笑って答えた。

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