微熱恋情【完】

Chapter.11





本館の三階から渡り廊下を使って北館に移る。そこの階段で二階に降りれば、資料が詰め込まれているだけで誰にも使わない家庭文化資料室があった。

その引き戸を引けば、ガラリと年期の入った音と共に埃っぽい空気が充満した空間が開かれる。




「元気になった?」


その先で揺れる茶色い髪。暖房さえ効いていないその教室の窓を開けて、冷たい空気が燻る中で誠は笑っていた。



「…うん」

「良かったー、倒れた時はさすがに驚いたから」

「ごめんね…」

「別に謝ることじゃないでしょ」



そう笑う誠に苦笑混じりの引き攣った笑みを浮かべながら、だが結局言葉に困りごめんと謝罪を繰り返す。


一旦互いに口を噤んだ私たちの間には痛いほどに静まり返った重たい空気が浮遊し、無闇な沈黙ばかりが募る。

重苦しい倦怠感が背中を這いずり、溜め息を我慢しながら痛いほど不穏な動きを見せる心臓を押さえた。





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