ライトスパイス【完】

Chapter.7





文字には性格が表れると言うけど、嘘らしい。

借りた物理のノートに綴られていた文字は思っていたよりも全然綺麗で、最初見たときは衝撃だった。




「ねえ、観月さん」


掛けられた声に視線だけ持ち上げ、向かい側に座る同級生の男を見る。彼の柔らかそうな焦げ茶色の髪が覚束なく暖房の風に揺れていた。



記憶の中の季節は高校2年の冬。

向かい側の彼と初めて言葉を交わした春の日からは、知らぬ間に時が流れていた。



「ねえねえ、観月さんってば」

「勉強中」

「真面目か」

「真面目のなにが悪い」

「観月さぁーん」

「……」



今から少し前の秋の日、唐突に好きだと告白してきた彼との関係は相変わらず代わり映えのしないものだった。

お互いに一人の時、彼は気まぐれに私の側に近寄って来ては他愛のない会話を交わして別れる。



ただ、それだけ。

それ以上を求められたことは一度もない。





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