ライトスパイス【完】





自分の気持ちに素直だったのはやっぱり智也の方で、意地ばかり張る私は未だに何も成長していなくて。

それでも宝物に触れるみたいに丁寧に、私を抱きしめる智也の腕の中は、今でも涙が出そうになるくらい優しいから。



ねえ、智也。

どうしてそんなに、私に優しいの?



私はいつも強がりだけど本当は臆病で、だから自分が傷つくことをなによりも怖がって。

自分を守るために別の誰かを傷つけるような。

そんな人間なんだよ。



あの時だって、私はね。

自分の代わりに、智也を傷つけたんだよ。


本当は気付いてたでしょう?




「待ってるから」

「え?」

「待ってるから、早く戻って来いよ」

「っ……」



そう言って困ったように笑った智也は触れ合うだけのキスを私の唇に落とし、爪の先で淡く耳許を愛撫した。

不安定に揺れる心はいつも指針が曖昧なのに、それでも辿り着く先は、智也の傍しかないの。





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