ライトスパイス【完】

Chapter.8





「調子乗んな」



最早このやり取りが億劫である。

舌打ちを飛ばした私は徹夜明けで眠い目を鋭く細め、隣で笑う男を睨み付けた。



「一緒に寝ようよ」

「気ッ色悪い」

「そんな気分なんだけど」

「知らん」



かちゃ、と金属の擦れる独特の音が響く。

疲労を訴える重い体を引きずるように部屋へ身を滑り込ませれば、閉じようとした扉が頑なに動きを拒否する。



それはもちろんのこと。

外部から与えられる力によって、だ。




「それが嫌ならキスさせて」

「どういうことよ」

「俺にもよくわかんないけどお願い」

「調子のんな」



本格的に気持ち悪くなってきた頭のおかしい御曹司にドン引きしつつ、どうしてこの窮地を打破してやろうかと睡魔に犯された頭で思案を巡らせる。


と。

「―――――――ッ!!!?」



その、瞬間。

油断した体がぐらりと傾き、持ち上げられる。

唐突すぎるそれに頭はキャパシティオーバー。





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