ライトスパイス【完】

Chapter.10





迷路のような大学図書館にて。

棚の中で窮屈そうに身を寄せる本を次から次へと取り出す私は、世の中の大多数の大学4回生がそうであるように、卒論制作の真っ最中だ。


経済学の専門書から著名な人物の自叙伝まで、ありとあらゆる著書を一心不乱に読み耽る私は、卒論と同時に現実逃避を並行中である。



卒論、そうだ、卒論だ。

自己暗示のように本を読み漁り、PCのキーボードを弾き、寝食もまともに取らずに卒論へ没頭する。



何故そこまで?

そんなの、問い掛けるまでもない。



と。

「鬼の形相ね」


静まり返った図書館へ響いた声に顔を上げた瞬間、ぱちんと軽く弾かれた眉間。



「シワ、寄ってるわよ」

「…痛い」

「そんな般若みたいな顔してたら男に逃げられるわよ」

「うるっさいなあ」



私は叩かれた眉間を擦りながら不機嫌を勃発。

それを見下ろし肩をすくめるのは、言わずもがな私の少ない友人の中の一人である菜々子。





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