ライトスパイス【完】

Chapter.4





久し振りに飲みに行こうという菜々子の提案に乗り、彼女の行きつけだというバーを訪れてから約2時間。



摂取したアルコールが体内を巡り、心地よい陶酔感が支配を広げる体を椅子の背凭れに沈めた。

隣で優雅にシャンパンを煽る友人の姿を視界の端に捉えつつ、私は趣味の良いジャズの流れる静かな店内でひっそりと呼吸する。


が。

「私、浮気された」


唐突に響いた女性らしい艶のある声音が空気を揺らした瞬間、心地よさに溺れていた思考は一気に醒め、私は思わず表情を歪めた。




「また?」

「それ、私の台詞なんだけど」

「今度は誰?」

「商学部の鳥居果奈って知ってる?」

「知らない」

「と思った」



私の人脈の狭さを熟知している菜々子はそう言うとため息交じりに「小柄でハムスターみたいに目のデカい女」と嫌悪感に満ちた声を吐き捨てた。

説明されても脳内に引っ掛かる人物を発見することは出来なかったけど、私の知人で有るか否かは今重要視すべき点ではないので適当な相槌を返すだけ。






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