Cynical Cinderella

File.02





週末の夜独特の賑やかさの中を潜り抜けながら、人通りの多い交差点をカツカツと強気なヒール音を響かせて闊歩する。

通りを一本入った場所にある落ち着いた雰囲気のイタリアンレストランの扉を開ければ、オレンジ色の照明が柔らかく視界を包んだ。



と。

「筧、こっちこっち!」



名前を呼ばれた方角へとゆらりと視線を滑らせれば、華奢な指先を揺らしている友人の姿を発見して歩み寄る。



「ごめん、遅れたよね」

「はい?待ち合わせ時間まで余裕であと5分ぐらいあるから」

「本当?先に来てるから私が遅刻したんだと思った」

「筧が遅刻?槍降るでしょそれ」



たまたま少し早く着き過ぎただけ、と顔の前で手を振りながら屈託のない笑顔を見せる彼女。

医大時代の同期である彼女は、去年大学を卒業したあと目黒にある総合病院に就職し、今はそこで内科医をしている。



「仕事早めに上がれたの」

「本宮が?奇跡ね」

「まあ5日も家に帰んないで働いてるんだから昔の友達に会う日くらい早めに上がったってバチは当たらないでしょ?」

「お疲れ様です」

「お互いに、ね」





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