愛を、もう一度 【前編】

愛を、もう一度 /1992年







――1992年1月1日



1991年が終わり、新しい年が明けた。

1991年は目まぐるしい一年だった。
春に大輔を失って、歩き方がわからなくなった私は。REDに出会い、赤城さんと、美紀さん、多くのREDを愛するお客さまに出会った。

西浦幸人と永瀬サツキを始めとした、夜の世界で生きる、様々な人たちを目の当たりにした、そんな1991年。
もう、こんな年は二度と無いだろうと思うくらい、私にとって激動の年だった。運命を変える、年だった。

1992年は、どうか、何事もない安定した一年を過ごせますように。そう、願った。


「かおり?いつまで手合わせてるの?」


参拝を終えた陽子の声が、隣で聞こえた。
どうやら、いつまで経っても顔を上げない私に待ちくたびれてしまっていたようだ。


『…ん…終わったよ』

「うんっ」


元日の今日、私と陽子は二人で初詣に来ていた。
偶然にも、地元の近くの神社ではなく、隣街にある小さな神社に行こうと言ったのは陽子だった。参拝者はもちろんいたけど、狭い敷地内を収まる人数程度。

あの日、大輔と一緒に来たときと同じく、人が溢れて前に進めない、なんてことはなかった。


「この後どうしよっかー?」


あれから、陽子との関係は切れることなく続いていた。主に私が休みの日に陽子が連絡をくれて、月に一、二回は会っていた。まともに友達関係など築いてこなかった私は、一緒に盛り上がることも、騒ぐことも出来ず。陽子が喋り続ける話を、一定の間隔を開けながら相槌を打ったり、陽子が振ってくれたことに答えたりするだけだった。

会話をするのが苦手な私に、陽子は気にする素振りも見せず、むしろそんな私の様子を見て、嬉しそうに笑顔を浮かべてくれた。
私も、そんな陽子と一緒にいられることが、素直に嬉しかった。

陽子が繋ぎ止めてくれたこの関係を、陽子にもう嫌だと言われるまでは、大切にしていきたい。

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