愛を、もう一度 【前編】


「今日さ、かおりちゃんに見せたいものあるんだよね」

『…見せたいもの?』


大輔は私の部活が終わる時間になると、毎日のようにバイクで迎えにきてくれた。
こんなに爽やかな見た目なのに、意外にも大輔はバイクが好きだった。
“まだ16だから400ccは乗れないんだけどさー”と、よく愚痴をこぼしていた。


「乗って」

『…うん』


大輔と付き合い始めて一ヶ月。大輔のことは何とも思っていなかった。
でも、大輔のバイクの後ろに乗るのは好きだった。
程よい風が頬を撫でる感じも、地面とタイヤが擦れる振動が体に響く心地も。大輔のバイクの後ろに乗っているときは、頭が空っぽになったみたいに何も考えずにすんだ。

生身の体はむき出しで、道路に放り出されればすぐに死んでしまうのに。そんなことも忘れてしまうほど、大輔の大きな背中は頼もしく、安心して身を預けることが出来た。


「もうすぐだよ」

『…あの…どこに』


大輔のバイクに乗って、もう1時間以上経っただろうか。9月の空はもう薄暗くて、夕方というよりも夜に近づいていた。

それでも大輔は進んでいく。坂道を上って、どんどん上って、やがて空が近づいていく。


「かおりちゃん、ほらあそこっ」

『……?』


街の上にある丘の、さらに上まで上ってきた。
言われるまま大輔の指さす方向を見ると、そこには…。


『……っ……』


私の見たことのない世界が広がっていた。

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