愛を、もう一度 【前編】

愛を、もう一度 /1990年





――1990年1月1日



大輔と付き合い始めて、新しい年が明けた。

初詣なんて本当に小さい頃に両親と三人で行ったっきりで大きくなってからは一度もなかった。
それ以来、初めて一緒に来た相手が大輔であることが嬉しかった。

近くの神社は人が溢れているからと、大輔のバイクで隣街にある小さな神社に向かった。

1月1日ということもあって、参拝者はもちろんいたけど、狭い敷地内を収まる人数程度。人が溢れて前に進めない、なんてことはなかった。

隣の大輔を見ると、私があげたマフラーを首に巻いて神様にお願いをしていた。


「……」


私が終わっても、大輔は目を閉じてずっと手を合わせていた。
大輔の長いお願いが気になって、私は大輔に尋ねた。


『…お願い、そんなにあるの?』

「うん。すげーある」


家族のことかなと一瞬思ったけど、大輔の顔がくしゃくしゃの笑顔だったから、どうやら違うようだった。


「かおりの笑顔がもっと見れますようにって」

『…えっ』

「かおりがずっと健康で病気とか風邪とかひかないようにって」

『……』

「かおりがもっと俺の事好きになってくれますようにって」

『…ばか』


大輔の願いは、私のことばかり。
“かおり”と自分の名前が呼ばれるたびに、胸の奥がきゅうっとうずいた。


「あとは……」

『…なに?』


言いにくそうに言葉を詰まらせ、四方に視線をさまよわせる大輔。


「………そのー」

『……?』

「今年こそっ…かおりとエッチしたい!!…って、お願いした。アハハハハハハ」

『……(馬鹿だ)』


照れ隠しのように大げさに笑う姿に呆れた私は大輔を置いて神社を出た。

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