愛を、もう一度 【前編】


「だからさ……かおりにプロポーズする権利、俺にちょうだい?」

『……なにっ、言って…るの』


小箱から指輪を取り出して、大輔は私の左手をとる。
大輔のその手が、カタカタと小さく震えていたのを今も忘れない。
私の返事を聞くまで大輔は指輪をはめようとしなかった。


「ダメ…かな」

『……………』


家族…大輔と家族になる…?

私にとって“家族”というのは儚い幻想のようなものだった。
仲の良い両親?孫を愛する祖父母?温かい家庭?
そんなもの、知らない。それは、私の中では誰かが作り出した想像の世界のことでしかありえないものだった。

だから、家族を思い浮かべてもそこに優しいものは何もない。父と母と祖父母が家で笑い合っている光景なんて、どんなに想像力を働かせてもイメージできない。


『…っ……ぅ……ふっ………うう』

「……か…おり?」


でも、どうしてかな。

大輔と結婚して、大輔との子供が出来て、大輔と家族になることは簡単に想像が出来た。
温かい照明の下で家族みんなでごはんを食べる光景なんて知らない私が、簡単にイメージ出来た。

大輔となら、温かい家庭を、優しい未来を描けたんだ。


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