愛を、もう一度 【前編】

愛を、もう一度 /1991年






――1991年8月2日


23時50分を過ぎると、赤城さんが私に声をかける。営業時間は3時までだったけど、15歳の私が父と叔父さんに許された時間は24時までだった。


「かおりちゃん、こないだ歩いて帰ったろ」

『………はい』


着替えをすませた私を数人のお客さまがじろじろ見てくる。従業員専用の入り口はないから仕方ないけど、まだお客さまがたくさんいるのに入り口から帰るこの瞬間は毎回いたたまれなかった。


「家近くてもタクシーで帰ること。わかった?」

『……はい…すみません』


お客さまの前でお説教をされるのは恥ずかしかったけど、ほとんどが常連さんばかりだったからみんな優しく笑ってくれた。


『じゃあ…お先に失礼します。お疲れ様です』

「はいお疲れ」

「かおりちゃん、また明日ね!」

『はい。お疲れ様です』


赤城さんと美紀さん、周りのお客さまに頭を下げて、私はREDを出た。

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