愛を、もう一度 【前編】

愛を、もう一度 /1990年





――1990年6月6日


それは大輔と私が付き合い始めてから十ヶ月が経とうとしていた頃だった。

この頃の私は、以前から不思議に思っていたことが何か良くないことの兆しのような気がしてならなかった。
大輔とバイクで街や街の外に出ると、大輔以外にもバイクを乗っている男の子たちと遭遇することはよくあった。大輔は免許を持っているけど、無免許でバイクに乗るなんてここらへんでは普通にあることだったし、大都会でもないから比較的車やバイク好きの割合も実際に乗っている若者の数も多かったと思う。

だから、道端ですれ違うバイク乗りの男の子たちが大輔に声をかけることも頭を下げる姿も、バイクを通じて知り合った関係だと思って何ら不思議に思わなかった。

でも、その日…。


「大輔っ」

「…宮本さん」


大輔とツーリングに出かけた帰り道。駅前で、あの初詣の日神社で会った宮本さんに会った。
宮本さんは大輔を見つけるとひどく怖い顔をして駆け寄ってきて、突然大輔の胸倉を掴んだ。


「お前、どういうつもりだよ。何で顔出さねえの?」

「……」

「先輩たちに…チームのこと任されたのお前だろ?俺じゃなくて、お前が選ばれた意味わかってんのかよっ!!」

「……」

「みんなお前のこと信頼してるから…だから、腕っぷしのいい俺じゃなくて…お前の方が相応しいって言われたんだろ!?」

「……すみません」

『……ねえ……チームって…なに?大輔…どういうこと?』


宮本さんと大輔のやり取りを傍で聞いた私は、去年大輔に言われた言葉を思い出して違和感を感じた。
一度私は大輔に聞いたことがある。あまりにも仲間の多い大輔に、どうしてそんなに友達がいるのかと何気なく尋ねた。そしたら大輔はこう言った。

“バイク好きが集まったチームに入ってんだよ。その、あれだ、ツーリング仲間ってやつだよ”

それなのに宮本さんの言っている言葉は、ただのバイク好きの言葉じゃなかった。
“腕っぷしのいい俺じゃなくて”とか“任された”とか…意味がわからなかった。


「大輔、お前まさか…」

「止めて下さいっ!!かおり、聞いて、俺っ…」


宮本さんの言葉を遮って、大輔が私に何かを言おうとしたときだった。
私の背後でクレープを食べる女子高生二人の会話が妙に耳に入ってきた。

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