愛を、もう一度 【前編】

愛を、もう一度 /1991年





――1991年8月3日


指輪が見つかった次の日、いつものようにREDに出勤すると赤城さんが何とも言えない神妙な顔つきで私を待ち構えていた。
来る途中でばったり会った美紀さんと一緒に店の中に入ったのに、赤城さんは私だけを呼んだ。


「美紀、お前ちょっと外出てろ」

「…えっ…うん。わかった」


赤城さんのいつもと違う雰囲気を美紀さんも感じ取ったようで、何も言わずに赤城さんの言葉に従った美紀さんは外へと引き返す。

二人きりになると、赤城さんはボックス席に座るように私を促した。一番手前にあったボックス席に座ると赤城さんはカウンターからお茶を二つ持って私の前のソファに座った。


「単刀直入に聞くけど、かおりちゃんサツキとどういう関係?」

『……えっ?』


てっきり、昨日タクシーに乗って帰らなかったことがバレて怒られるのだと思っていたのに。赤城さんの口からは永瀬サツキの名前が出てきた。


「7月の終わりにさ、幸人とサツキが二人で来ただろ。あの後サツキに聞かれたんだよ」

『…?』

「いつから働いてるって、年齢とか、シフトとかも……いくらかおりちゃんが綺麗な子でもさ、あいつそういうタイプじゃないんだよ」

『……あの(何が言いたいんだろう…)』

「サツキと幸人とは、もう十年近い知り合いでさ。あいつらが今のかおりちゃんと同じ歳くらいの頃から知ってるんだ」

『……そうなんですか』

「幸人はまぁ別として…サツキは口数も少ないし、付き合いの長い俺にもあんまり感情を出さないようなやつなんだ」

『……』

「何かに興味示すとかもないし。それこそ女になんて、声かけられることはあっても自分から声をかけるようなやつじゃない…絶対に」

『……』

「なのに…やけにかおりちゃんのこと気にしててさ…本当はサツキと何かあんのかなぁって思って聞いたんだけど」

『…以前言ったように…一回会っただけです。まともに言葉も交わしていません』

「…そっか…そうだよな」


どうして赤城さんがそこまで永瀬サツキにこだわるのかがわからなかった。
お客さまとスタッフの関係に関して赤城さんはうるさいわけじゃない。“嫌だと思ったらヘルプだして”と言われているだけで、裏を返せば嫌じゃなければ相手にしていいということになる。全て自己責任ということなのだろう…。

だからこそ、赤城さんが難しい顔で腕を組む姿は不思議で仕方なかった。

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