愛を、もう一度 【前編】


私が未成年だから?それとも、赤城さんにとって永瀬サツキが大切な知り合いだから中途半端に私に関わってほしくないとか?赤城さんの次の言葉が返って来るまで、いろんなことを考えた。


「……いやさ…お客さんに先入観持ってほしくないから、本当は、こんなこと言いたくないんだけどさ」

『……はい』

「サツキの親、街金業者の社長なんだよ」

『…街金?』

「あー…街金っていうのは、大手の消費者金融や銀行と違って金利は高いんだけど、金借りる審査が甘い金貸しのこと。規模が小さいだけで役所に届け出もしてる。法的にも問題はないんだけどさ…」

『……?』

「ここらの街金は…大抵バックにこういうのがついてるんだよ」


こういうのと言いながら、赤城さんは人差し指で自分の右頬にまるでナイフを入れるようにすっと指を滑らせた。そのジェスチャーで、赤城さんの言いたいことがはっきりとわかった。


「サツキも親父さんの会社で働いてる。あいつのは子会社だから親父さんのとこより規模は小さいけど、あの歳で社長だ」

『……』

「このままいけば、いずれ親父さんの跡継ぐだろうな…」

『……あの』

「まぁ…で…何が言いたいかっていうと…サツキは堅気じゃない」


まともな職業じゃない。赤城さんははっきりとそう言い切った。


「ま、俺が言うのもおかしい話だけどなぁ」

『そんなっ』

「かおりちゃん、まだ15だ。真面目だし、頭も良い。ちょっと不器用なとこもあるけど、気立ても良い。何より美人だ」

『……赤城さん』

「サツキとは深く関わらない方がいい。今は何の関係がなかったとしても、かおりちゃんが何とも思ってなくても…あいつ、多分かおりちゃんに何かしらの感情抱いてる」

『そんな…(赤城さんの勘違いじゃ…)』

「わかるんだよ。ガキの頃から見てるんだ…あいつのこと…十年もさ」


十年という重さに、反論できる余地はなかった。


「俺さ、浩二さんには本当に世話になったから。俺の事信用してかおりちゃん預けてくれて嬉しかったんだ…浩二さんのこと、裏切りたくないんだよ」


赤城さんの言う“浩二さん”は私の伯父さんのことだ。叔父さんと赤城さんがどういう知り合いかはわからないけど、“死んでも返せないくらいの恩がある”と、初めての顔合わせのとき赤城さんに真顔で言われたことが今も印象的だった。

父方の祖父の会社を継いで、父とは違って経営の才能があった叔父さんは会社の業績をみるみる上げている。父以外で私に深い愛情を注いでくれる数少ない人。そんな叔父さんを慕う赤城さんを、私も裏切りたくないと思った。


『…わかりました。何もないと思いますけど…関わりません』

「…うん。お願い」


だから、最後まで言えなかった。

昨日助けてくれたことも、指輪を一緒に探してくれたことも、マンションの前まで送ってくれたことも。
赤城さんには言ってはいけないと思った。



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