愛を、もう一度 【前編】

愛を、もう一度 /1990年




――1990年8月30日


あの日から大輔と会わないまま、大輔と付き合って1年が過ぎていた。
夏の大会が終わり部活も引退した私は、学校が終わるとどこにも寄らずに真っすぐ家に帰った。

大輔から何度も電話は来ていた。そのたびに父に頼んで居留守を使ってもらった。居留守を使う理由を話そうとしない私に、父は何も聞いてこなかった。
ただ、電話が切れるたびに“本当に、いいの?”と父は言った。
大輔は学校の校門の前にも来ていたけど、私は事務員の人に頼んで学校の裏口から帰っていた。

そうやって、私は、大輔を露骨に避け続けたていたんだ。



その日私はコンビニにまで歩いていた。カレーを作ろうと準備をしたのに、カレー粉がなかったから。
制服姿のまま夕方のコンビニを一人でうろうろするのは久しぶりだった。隣にはいつも大輔がいたから。

カレー粉を買って、ついでにファッション雑誌も買ってからコンビニを出ると、大輔と同じ制服を着た男たち数名がバイクを停めた駐車場の前でたむろしていた。


『………(急ご)』


気のせいかジロジロ見られている気がして、なんとなく家までの道を小走りで進んだ。
でも、私の僅かな抵抗は、数台のバイクが私の行く先を先回りしたことによって無いものとされた。


「君知ってるよー。かおりちゃんだよね、岩波の彼女の」

『……』

「2年の分際でEmperorのトップに選ばれるなんてさ…図々しいんだよな」

「ふざけてんだよっ…俺ら3年差し置いて。宮本のやつだって納得できねえって最初言ってたくせに、結局は上に逆らえなくて怖気づいてやんの」

『……』

「なぁ…この子さらっちゃう?」

「うっわお前えげつなっ!」

「でもよーそれぐらいしねえと気が済まねえよなー」


好き勝手言う男たちに、胸の奥がもやもやしてきた。
暴走族のリーダーの資質なんか私にはわからない。大輔が1000人もの中のリーダーなんて今も信じられない。
でも、こんな男たちをトップに選ばなかった上の世代の人たちの気持ちだけはわかった。

0
  • しおりをはさむ
  • 72
  • 5742
/ 471ページ
このページを編集する