愛を、もう一度 【前編】


大輔は倉庫の入り口までバイクを走らせると、私の手をぎゅっと握った。


「…悪いやつらはいないから安心していい。でも、絶対に俺から離れないで」

『…うん』


大輔はそう言ったけど、倉庫の一階にはどう見ても悪い男たちがうじゃうじゃ溢れていた。それも中学生か高校生くらいの若い男ばかり。数百人じゃきかない。本当に1000近くいたと思う。

鉄バットを始めとした、鋭い形状の鉄が付いた縄が視界に入ったけど、目を逸らした…。

大輔は一階ではなく階段を上って二階まで来ると、ドアを二回ノックした。


「大輔です。入ります」


大輔の声は緊張していた。顔も少しだけ強張っているように見えた。そんな大輔の姿に私まで妙に緊張してしまった。
ドアを開けると、一階とは違って数人の大人の男が赤と黒のソファーに座っていた。


「幸人さん、お疲れ様です」

「大輔、久しぶりだね。元気だった?」

「はい。あの、幸人さんっ、俺の彼女です」


大輔が私の手を引いて、ぎゅっと体を寄せる。


「へえ。随分キレーな子だね。同級生?」

「いえ、中3です」

「中3?えっとじゃあ15歳!?」

「いえ、まだ14です」

「うわぁ…アイツにも知らせてらろうよ。さすがにアイツも驚くよ」

「へへっ、ですかね?あっ…かおりごめん。この人は西浦幸人さん。俺の大大大先輩」

「こら大輔、俺らはそんな年じゃないよ」

「あっ、すみません」


これが西浦幸人との初めての出会いだった。
男性なのに色白で華奢で、女性が好きそうな甘い顔をした優雅な男性。赤いソファがよく似合っていた。

ただその顔に似合わず洞察力が鋭くて抜け目のない人だと、来る途中に大輔が教えてくれていたから、大輔のように親しみなんて抱けなかった。

西浦幸人の柔らかく笑う笑顔の、その瞳の奥には暗く深い闇が見えた。

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