愛を、もう一度 【前編】

愛を、もう一度 /1989年





――1989年7月10日



「おーい!差し入れ持ってきたぞー」


それは決まって金曜日。部活が終わるタイミングを見計らって、大輔は女子部員と男子部員の分の差し入れを持ってやってきた。

大輔の印象は、面倒見が良くて、しっかり者で、どこに行っても人に囲まれる才能を持っているような人だった。
私にはいつも大輔の周りだけがキラキラして見えた。


『…岩波先輩、ありがとうございます』


一人一人が大輔に話しかける中、私もお礼だけは毎回伝えていた。他の部員のように、積極的に話すわけでもないし親しくなりたいとも思わなかったから。

その日も、それで終わるはずだった。


「かおりちゃんっ」

『……(かおり…ちゃん?)』


他の部員が大輔を囲む中、差し入れのドリンクをもらって、早々に立ち去ろうとした私を止めたのは大輔だった。
かおりちゃんなんて、小さな女の子みたいな呼び方をされるとは思ってもみなかったから、思わず立ち止まってしまった。

大輔は周りの子たちをかき分けて私のところまで小走りで駆け寄ってくると、いきなり突拍子もない質問をしてきた。

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