the beauty of silence

襤褸の箴言 /めまい

「畜生!」男はビルの合間のポリバケツに蹴撃をくらわせた。闇の中水色の筒が転がってゆく。同時に蓋が開いて中から手つかずの鶏肉やらプチトマトやら薄汚れたコンクリートにこぼれ出た。するとその陰から黒い襤褸(ぼろ)じみた人影がものすごい早さで飛び出した。そいつはリウマチ患者のように歪になった骨と干涸らびた肌をしていてひどく嫌な感じがした。
「なんだ? この野郎、どっか行けよ!」男は激昂して叫んだ。
 すると襤褸はこう言った。「おまえ……捜しているものがあるだろう?」
「なぜ、きさまがそれを知っている?」男の声は震えていた。

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