魔法ノ花Ⅱ【完】







「デートならご自由にどうぞ?君たちの間にある性別という大きな壁はこの際あたしがユーフォーキャッチャーでつり上げてあげるからご心配なく~」


あたしは努めて笑顔で言ってやった。笑顔でね笑顔。ああなんて真摯なのセーラちゃん。君の将来は紳士服売り場の定員さんに決定ね。


「やーねー、俺たち一応、一応だけど君を誘ってんのよー一応」



ここで直球で来やがったな。次はカーブと予想してたのに。



「ていうかあたしは偶然を装って君の頭にデッドボールを投げ込みたい。ぜひとも投げ込みたい切実に!」


「ちょっと勝手に話ずらさないでよ。聞いてた?誘ってんの、俺たち」



▼雅也は軽く受け流した!
▼セーラはきゅうしょをはずした!



……分かっとるわあんたたちがどこに行くか知らないけどどこかにあたしを連れて行こうとしていることくらい。それを承知で拒否してるのが分からないのか。

いや、分かってるな。


2人ともそろってにやにやしてるし。オメーらの表情筋を鍛え直してやろうか。


「せやせや。こっちは一応おまえを誘ってんねん。おまえは一応女やからな。一応。男子2人で街歩いて買い出しするより危ないカンジはせえへんやろ。ま、一応やから変に見られる可能性も少なくないけどな。ま一応やから」



一応一応うるさいわ。



「なんやなんや。辛気くさい顔して」


「おまえのせいだよ!」


「つかおまえカッコまでダサいな」



あたしのクレームを流すな!そして悪口を重ねるな!


本当にこいつは口を開けば悪口が出てきやがる。悪口を言わないと死んでしまう病気なのだろうか?そうでもない限りこんなに暴言を吐ける人間いないよ。絶対おかしい。



「あのさ、わりと本気で検査行く?」


「なんでやねん!行くべきなのはオマエやろ!!」


「はいはい、湊も流されない流されない。この子の文脈丸無視した発言はいつものことでしょー?いい加減慣れなきゃね、どーどー」



雅也って本当にSだよね、湊もあたしも一挙に傷つけるこの巧みな攻撃。マジでひとたまりもないんですけど。



「あたしね、雅也と2,3カ月ずっと一緒に生活したらゴルゴさんが出来上がると思うんだ」


「何言ってんねんマジで解剖したろか?」



ヘッ、と鼻で笑う湊。とりあえず脳内で湊をサンドバッグにするイメージを一瞬でして怒りを鎮めて、と。



あれ……待てよ?てことは、一緒に生活してる湊とかルイとかいう住民は……はっ!もしかして隠れゴルゴ!?



「ゴルゴが……5人……ぷっ」


「マジでおまえの脳内はどういうブラックボックスになってんねん。会話が成立せんわ」



……湊がわりと本気で呆れた目を向けてきた。


なんでだよ。笑えよ。ゴルゴが5人雅也と生活してる図を想像したら笑えるだろうが。



「ハイハイ、話し戻すけど。セーラちゃん、着替えてるってことはもう外出する準備できてるんでしょ?問題ないんでしょー?」



はい、そうですね。


実は今日、あたしはこれから出かける予定だったので外着に着替えていました。



でもそこで君たちが『セーラさんが外出するなら今日は諦めるしかないね。はっはっは』とか言える紳士でないことはもう学習済みだよ。



ま、コイツらがここに来た時点で予定は取り止めだ。向こうは全く諦める気はないらしい。また今度でいいか。



「何やねん洗濯バサミみたいな顔しやがって」


「わりと本気で意味わかんないんだけどもね」


「湊、それは元からだよ。かわいそーだよ」


「ああそうか、悪かったな納豆!」


「今日の暴言すべて聞かなかったことにしてあげるから出てってくれないかな?」


「なんでやねん!こないなイケメン2人揃っとんのにチャンスを棒に振るんか?なあ振るんか?できひんやろ?おまえも人間の彼氏がほしい年頃やろ?」




百億歩譲ってあたしにその願望があったとしても、コイツら2人になびくわけがない。ありえない。たとえゴルゴさんがなびいてもあたしはなびかない自信がある。


テメーら本当に顔だけなんだよ。中身どこに置いてきたんだよ。銀河の果てまで取り戻しに行って来いよ。



ていうか早く断ろう。この2人に誘われて、出かける―――なんてできないよ。




困る。すごく困る。





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