魔法ノ花Ⅴ【完】

★3年Aクラスの春休み /寒九の雨と立待月






―――――目が覚めると、そこは暗闇だった。



………いや、窓がある。



わずかに冷たい光を取り入れる、小さな窓が。




「…―――」



小さな窓から、その月の形は見えない。



「あー、起きたぁ?」


「……南はどっち?」


「は?」


「南だよ」


「……誰が、んなこと教えると思うの?」




……さすがにそれほどバカじゃなかったか。




「てゆーか、目覚めて第一声がそれぇ?最高だねぇ」


「……悪趣味だね」




こっちは目を開けて最初に見た人物があんただとか最悪だよ。



……もっと最悪なのは、それよりも先に月明かりを見てしまったことかなぁ。




―――――その上。





その上、あたしがまだここにいるってこと。



どうやらあの人は、あたしが気を失っているのに乗じてあたしを乗っ取るつもりはなかったらしい。





もしかしてあたしの意識がないときに何かあの人が……と思ったけど、それなら今目の前に匡がいるはずがない。





あたしは、まだ、ここにいる。



何も、そこに誤りはなく。





……あの人の性格を考えると……確かに、あたしが意識を失ってる間に乗っ取るのなんてあの人にとって面白みに欠けている。





どうせ乗っ取るならあたしの抵抗もなく乗っ取るのなんて、きっと、あの人には退屈なんだろう。






そういうことですか、はいはい。





分かってますよ、もう。



あなたのことくらいね。





何年の付き合いだと思ってるんですかい。





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