魔法ノ花Ⅷ

あかいろ /サルビア〔wisdom〕




Side.H






「おやおやー。俺の相手は君かい。春日ちゃん」


「……その呼び方はやめて」





私の目の前にいるのは、椎名雅也。


いつか見たその顔と何も変わらない。




……いや。前から見ていて気持ち悪くなる笑顔をしていたけれど、その表情に加えて、何か別の感情が混じった気がする。



その感情は……





「ハルちゃんは、いつ見ても迷いのある顔だよねー」


「……、…」


「ずっと迷ってるんでしょ。自分がどうするべきなのかって」


「………」


「セレステラの図書室で見た時よりも、その迷いが強くなってるみたいだねー。何でー?」


「……あなたには関係ない」


「そーですか」



椎名雅也は笑う。私の答えに何も気にしていないかのように。


私とは違って、思考が外に出ない。




「そういえば、この前はごめんねー。なぞかけを間違えちゃったみたいで。君の主は、若月星羅だったんだねー」




この前……いつのことかと思えば、あの時のことか。


火の国の禁書の部屋で出会ったあの時。




『ひとりしかいない、私の主君の命令よ』





―――――あの時と違うのは、髪を結っていないこと。





「……そうよ。あの時のあなたには失望したわ」


「それはごめん」



そう言って椎名は笑う。


この男はあの時と同じ。何を考えているのか、相変わらず分からない。




「でも、俺は君が相手でラッキーだったかな」


「……なぜ?」


「なぜって、そんなの君が一番よく分かってるんじゃないのー?」




……それは。


ダメだ、顔には出すな。




この男は鎌をかけているだけ、本当に確信してなんかいない。






「だって君は、ロアンに選ばれてなんかないもんねー?」






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