魔法ノ花Ⅷ

あかいろ /カンナ〔paranoia〕




Side.M





「君は、ロアンに選ばれていない」


「………」




静かな対峙だった。


色んな方向から音が聞こえてくる。



金属のぶつかる音、何かが破壊される音。


気配、地響き、地面が揺れる。



ぜんぶ、一緒くたに入ってくるのに、それぞれが頭の中に自然に流れてくる。


落ち着いてる。



すごく落ち着いてる。



周りの喧騒と、自分が、まるで乖離したみたいに感じる。





……いや、俺だけが乖離してるわけじゃねーや。


俺だけではなく、目の前に立っている、女の子も、静かに立っていた。




「……聞いていますわ。お姉様に、あなたのことを」




……お姉様って言うのやめろ。


言語は違うはずなのに、同じに聞こえる。



ステラとアイリーンが、被って見える。


まったく同じ顔だな。



本当にこの子の造形がそのままセーラの妹のステラと同じなら、セーラと妹のステラは全く似てねーってことだ。



瑠菜と瑠依みたいだ。




「お姉様は、貴方のことを鈍感だと言っていましたわ」



ふふ、とバカにしたように笑うアイリーン。


鈍感と言われて俺は何も言い返せない。


そうだよ、俺はバカで物を考えるのは人に投げてばっかだよ。



「でも、今の言葉は貴方自身の言葉に聞こえましたわ」



そう言ってアイリーンはヘッドホンに手をかける。


そうして、それを耳元からはずす。




「……大事なものだから、取らねーんじゃなかったのかよ」




湊によれば、大事なものだと言って湊に触ることさえ許さなかった。


はずせと言っても会話中一度もはずさなかったらしい。




その言動から、そのヘッドホンは、耳の聞こえないアイリーンが、聞こえないことを補うために身に着けているものだと勘違いしていた。



見た目に騙されていたんだ。俺もみんなも。




でも今、アイリーンは、何のためらいもなくそれをはずした。




「大丈夫ですわ、貴方を騙すためにつけていたわけではありませんもの。だからそのように自信をもって放たれた言葉に抵抗する心算もありませんわ」




俺の言葉に対しての回答をする。


耳に何も当てていないのに。





アイリーンは、耳が聞こえている。




……やっぱり、アイリーンの耳のヘッドホンは、ダミーだった。





アイリーンは、ロアンに選ばれてはいない。





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