魔法ノ花Ⅷ

きいろ /キンセンカ〔sorrow〕





Side.A




「ついに、ここまで来ましたね」


「……珍しいね。おまえが緊張するの」


「私は凡人ですから、常に人並みの緊張をしていますよ」


「おまえが凡人ならこの世界は大抵凡人以下だよ。ま、それでも私は天才だけど」




セーラ様は安い酒を傾けながら言う。


酔っぱらっているわけではなさそうだ。セーラ様は素面でこの調子だから。



「やっと、ここまで来た。もうすぐタクラがあの子たちとぶつかる。タクラはわざと負けて、ロアンの手駒を減らそうとするだろう」



心苦しそうな表情を包み隠さないのは、大事な部下への分かりやすい情だ。



「それも利用したのはあなたですよ、セーラ様」


「……煽らなくていいよ。分かってるから」


「タクラ様はあなたを恨みません」


「……それも分かってる」


「………」



セーラ様は表情を再び引き締める。



「瑠依と湊はおそらく分力のことに気が付いてるけど、あの様子じゃ周りに言ってない。私がいなくなった後に真実を伝える役目はおまえに任せるから」


「分かりました」



被ったフードはそのままにうなずく。


私の髪はこの酒屋では少々目立つ。




「それで、この作戦を終えたら、我々はどのように」


「……おそらく、ルイの分力はロアンに知られてる。ルイはロアンの魔法を2回以上も弾いてるからね。それに花を白にしかしないのも、決め手のひとつになっちゃうだろうから。……ま、これは仕方のないことなんだけど」


「………」


「おそらくルイの魔法はロアンに入らない。だから、もう一度チャンスが必要だ」


「……もう一度」


「そう。そしてそれは有能なセーラちゃんが既に用意しました」



胸を張るセーラ様。


セーラ様はいい加減、そのようにボケられても私は受け流すことに気が付いた方がいい。




「本調子じゃないロアンは、私の体を手に入れた後一度逃亡するだろう。それは追わなくていい」



ここで合いの手は入れない。


セーラ様の話には、必ず最後に決め手がある。



「ロアンが復活したらまずやると考えられるのはこの世界を光の神の分力の器ごと滅ぼすこと。ただしこれはもう12人の王様の魂で封じた。それはできない。でも彼女の破壊的衝動と今後の長期的ビジョンを考えてまとめて、さらに種々の布石で道筋をひとつひとつ断っていくと、彼女の行き先は絞られる」





「彼女が次に現れるのは―――――」





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