魔法ノ花Ⅷ




「タクラ様はこの部屋で過ごされていたのですか。ご不便ではなかったですか?」


「いや?俺はこれくらいがお似合いでしょ」



ベッドの上に腰掛ける。俺の部屋に椅子なんてない。



「王様も座ります~?」


「では」


「座るんのかよ」



思わず声に出してツッコんじまったよ。



……で。




「話があるなら聞きますけど」




部屋は薄暗い。


部屋を照らすのは小さなろうそくのみ。


城は石造りだからよほどのことがない限り火事は起きない。




「単刀直入に言います」



王様の顔は真剣だ。


いつだって真剣だ。


この人からおふざけの言葉は出てこないだろう。






「――――この戦いが終わったら、コートクラウンに戻りませんか。第3番軍、将軍として」





『この戦いが終わったら、おまえもこっちの世界に来たらどうだ』





………





「どうして?」




どうして、オメーらはそうなんだ。


俺に何かを期待しすぎてないか。



「大将はもうコートクラウンには帰ってこねえだろ」


「それは無関係です。それでも、私は将軍をタクラ様にと考えています」


「……そんな資質あるように見えます?」


「はい」



何でそんな自信を持って答えてくれやがるんだよオメーは。




「もちろんタクラ様にほかにやりたいことがあるのでしたら無理強いはしません。向こうの世界に行かれるのでしたら身を引きます。……ですが、まだこちらに情が少しでもあるのなら、どうでしょうか」


「………」


「私はタクラ様の力を必要としています。この勧誘は私の一存で、セーラ様に何か言われたわけではありません。……こんなことをしていたと知れたらセーラ様に怒られてしまうかもしれませんが」


「……今日はよくしゃべるなあ」


「言葉を尽くしてあなたという人材を欲しているのですよ」




王様はニコリと笑う。




「そうだなあ。まさかそんなことオメーに言われると思ってなかったからな」



何でだよ。

何を期待してんだ、俺に。


何もできなかった男だよ、俺は。




「ちょっと考えさせてよ」


「……私が王である限り、いつでもお待ちしております」




王様はそう言って、一礼してから部屋から出ていった。









「……だからさあ、」



恵まれすぎなんだって。


ベッドに寝転がる。今日はもう一人酒の気分でもねえや。





俺は地主に虐げられてたような下民も下民だ。


何でその俺に、そんな恵まれた選択肢が与えられるんだよ。






『この戦いが終わったら、おまもこっちの世界に来たらどうだ』



『この戦いが終わったら、コートクラウンに戻りませんか。第3番軍、将軍として』





「………」



やめだやめだ。


考えんのやめ。



俺はこの戦いが終わったら、元の殺し屋稼業で自由気ままに過ごすのがお似合いだ。




それ以外の選択肢なんて、俺には贅沢だ。



そうだろ?ロアン。


俺の中のロアンはきっとあざ笑ってる。



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