魔法ノ花Ⅷ

さくらいろ







『ここは――――』




気が付くと、私はよく分からない場所にいた。


真っ暗闇なのか、光の中にいるのか。それさえも分からない場所。




そうして、自分の手や足の感覚もない。


自分の体という感覚がない。



精神だけが、ふわふわ浮いているような。




……ああ、そうだ。私、そういえば今、ロアンに乗っ取られてるんだっけ。



今日は誰も殺さないといいなあ。


無理だろうけど。




また、私の罪が重なったね。


……まあ、それよりもここは一体どこだろう。




いつもあの人に乗っ取られてるときは、意識が深く沈んで記憶なんかまったくないんだけど。



今は、意識がある。あるうちに入るのかどうかも分からない状況だけど――――というか、まさか死んだ?




こんなところで?



それなら、どうしよう。私あっちにまだ残してきたものがいっぱい――――と。





『気が付いたか』




そう、言って。


語りかけてくる人がいる。




しかもこれは……セラフィア語。




『誰?』




どこにいるのかも分からない。


近くにいるのか、遠くにいるのか。




目の前にいるのか背後にいるのか。


そもそも今のあたしの状態に前後なんかない。目も背もない。




『姿を見せて』


『姿などない』


『………』



それに、私は一体どうやって声を出しているのだろう。


口を動かしてはいない。無意識にテレパシーに頼っているのか。




耳もないのに相手の声が聞こえる。




『私は死んだの?』


『まだ死んではいない。ここはおまえの世界と死の世界の狭間の空間だ』


『………』




……狭間?何それ。つまり死にかけってこと?


いや、そこじゃないでしょ。今、この人は私に言った。狭間の空間だと。




そんな場所があることなんか知らない。初めて聞いた。そりゃそうか、私の世界には死んだことのある人間なんかいない。



『……ここが狭間だとして、あなたは誰?どうしてここに』


『名はない』


『………』


『名はない。生きていたころは、光の神と呼ばれていた』




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