あの、涼やかなる声の向こう側で

作者井関和美

垣谷俊一(かきたにしゅんいち)は生まれつき頭の中に不具合を抱えており、
他人の顔を認識する事ができない上、のっぺらぼうに見えていた。
それゆえに他人の心情を計り知れず、その機微に気付く事もできず、
人間関係を築く事も困難な日々を過ごしていた。

小学校卒業の日、俊一はある少女と一瞬の邂逅を果たす。…





あのさ、お前って、


いつもとてもきれいな声で笑って、俺の隣にいてくれたよな。



でも、俺はそんなお前の顔を、いつだって見る事はできなかった。



なあ、今更なんだけどさ、一つだけ聞いていいか?



お前って、いつもどんな顔して笑ってたんだよ…。






(完結作品)