月の女神に魅せられて SS 【完】

Our First Love? /measure 8. 真相




逃亡時間、約一時間で連れ戻された一輝の部屋。


玄関で束の間、腕を解放されたタイミングを逃すまいと、早々に靴を脱いで上がり込み


「ち、ちょっとトイレ!」


乙女の恥じらいもなくそう叫んで玄関脇のトイレに立てこもった。


バイクの後ろに乗っていた僅かな時間じゃ、何をどう話せばいいのか整理仕切れずに、未だ混沌とする私の思考回路。


用を足す気もないのにとりあえず蓋の上から便座に座り込む。


……とりあえず、リンさんが何者かと、彼女のピアスが寝室から出てきた件については最低限確認すべき事項。


リンさんが初恋の相手かどうかまでは……単なる私の好奇心の領域を出ないし、そこまで気にする女はうざがられる?


……でも雄大さんが渡してくれたこのジッポ……


月に祈りを捧げる女神様とLUNAの刻印に視線を落とす。


……もしかしたら初恋の相手が『ルナ』っていう名前だったりする?


だとしたらリンさんじゃないという『答え』?


でも雄大さんは私がリンさんを一輝の初恋の相手として疑ってることなんて知らないはず。


じゃあこのジッポにどんな答えが隠されてるんだろう?


蓋をそっと開けて、試しに炎を灯してみるけど、そこに答えが浮かぶはずもない。


火を消して蓋の中やら底やらを隈無く調べたところで『LUNA』以外にヒントなんて見当たらない。


はぁ……と溜め息を吐いた私の視界に突然入った、ある違和感。


一輝にも私にもそんな習慣はない……三角に折られたトイレットペーパーの切り口。


……何これっ!


その、これ見よがしな『女が出入りしました』アピールに今まで頭を悩ませていたことが一瞬吹き飛ぶほどイラッとして、無駄に一巻きペーパーを破りとる。

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