捧げ華~濁りの君よ~【完】

玖章 流転スル想イ

「は?縁談?」



日本人形のような黒くはっきりとした目をこれでもかと見開き、佳世がぽかんと桜子を見つめる。



「うん……」



俯きがちに頷く桜子に佳世は問う。



「誰と」


「……東雲さんって言って、わかる?」


「東雲……」



二、三度その名を繰り返した佳世の顔色が次の瞬間、はっと変わった。



「東雲って、あの人形男!!?」


「に、人形男って……えっと、そう……東雲さん……」


「そいつが縁談を?」


「うん」


「どうして?おじさんの知り合いとか?」


「ううん。父さんは知らないって。あちらは私としか認識がないって……」



その返答に佳世は更に目を丸くした。



「へぇ……じゃあ何?あの人形男は貴女に惚れて、それで縁談なんて寄越してきたの?」


「それが、さっぱりわからなくて……」



今朝、訪ねてきた東雲の様子を思い出し、桜子は首を傾げた。



……佳世に縁談のことは打ち明けたが、零や自分の気持ちは一切話していない。



昨日の今日で感情の整理がついておらず、それに加えて東雲からの縁談だ。



とてもじゃないが、理解の許容範囲を越えている。



ある程度、自分の気持ちが落ち着いたら話そうと思っているのだが―――。



(……縁談、か)



未だに実感できぬ出来事に軽く息を吐き、桜子は今朝の東雲との会話を思い出した。










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