捧げ華~濁りの君よ~【完】

拾壱章 囚ワレノ鳥ガ啼ク

―――桜子が消えた。



文字通り、なんの痕跡も残さず忽然と消えてしまったのだ。



その事実に佳世の焦りは日に日に濃くなる一方だった。



あの夏祭りの夜、桜子は帰って来なかった。



それから一週間、誰一人とて桜子の行方を知る者はいない。



はぐれた後、桜子の家に行くのは毎年のこと。



そうすればお互い迷子になっても確実に会えるし、人混みの中をがむしゃらに駆け回るより断然、効率が良い。



毎年、必ず佳世よりも先に帰って「しょうがないわね」という表情で出迎えてくれる桜子が、今年に限って居なかった。



普段、常に穏やかで笑顔を絶やさない桜子の父が真っ青な顔で動揺しているのを佳世は初めて見た。



どうしてあの時、はぐれてしまったのだろう。



どうしてあの夜、見つけるまで探さなかったのだろう。



はぐれるのは毎年のことだからと、能天気に祭りを楽しんでいたあの夜の自分を殴って罵りたい。



そんな後悔に押し潰されながら、佳世は縁側で桜子の父の言葉を絶望的な気分で聞いていた。



「駄目だったよ……手掛かりひとつない。警察もお手上げ状態だ」



この一週間でひどく憔悴した蓮志郎の言葉に佳世は唇を震わせた。



桜子が消えた翌日、佳世と蓮志郎は真っ先に警察へと飛んで行った。



けれど、痕跡ひとつ見当たらないのだ。



まるで、神隠しにでもあったかのような。



その考えにぞくりとした。



「おじさん……桜子は」



一体、どこへ行ってしまったのだろう。








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