捧げ華~濁りの君よ~【完】

弐章 突然ナルハ、藤ノ宮ノ誘イ

絢爛豪華な屋敷を前にして、桜子は今すぐ回れ右をしたくなった。



しかし、それは無理なことだと、ここに来た桜子が一番よく知っている。



何しろ精緻な装飾の施された門から屋敷まで自動車で約数分。



その間窓から見えたものと言えば、延々と続く庭園。



白と黒のお仕着せを着た使用人たちが立ち並ぶ中、桜子は背後の白木に助けを求めた。



「こちらでございます」



無言の訴えに気づいているのかいないのか、白木は完璧な笑みで桜子を屋敷の中へと誘う。



扉を開けた瞬間、目の前に広がるのは広い玄関と高い天井にぶら下がる照明―――シャンデリアだ。



吹き抜けとなっている二階を見上げ、桜子は愕然とした。



(ひ、広い……)



床に敷かれた絨毯に目を落とし、これは土足で踏んで良いのかと半ば本気で悩んだ。



場違いなことこの上なく、居たたまれない。



……どうしてこんなことになっているのだろう。



目の前の光景に圧倒され、現実逃避の如く、桜子はこうなった経緯を思い出す。



―――事は、女学校からの帰りに起きた。









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