捧げ華~濁りの君よ~【完】

参章 三度目ノ巡リ逢イ

生きた心地がしないというのは、まさにこのことを言うのだろう。



先日も通された部屋に案内され、桜子はどうにか身体の震えを抑えていた。



そうでもなければ今すぐにでも逃げ出しかねない。



「こちらでございます。どうぞ」



相変わらず考えを読ませてくれない白木の笑顔からは何もわからず、気分は最早まな板の上の鯉だ。



奥様がお呼びです、と白木が桜子を迎えにきたのは、やはり女学校の帰り道。



断ろうにも断りきれず、結局桜子が一人、またここへ舞い戻る。



呼び出された件はきっと、先日零に平手打ちを食らわせたことについてだろう。



むしろ、それだけしか思い浮かばない。



開かないで、という矛盾した桜子の必死に願いも虚しく、やがて樫の両開き扉が開かれる。



「桜子さん!」



千鶴子の声に桜子は肩を震わせた。



怯えながら、それでもできる限りの弁解を試みようと振り返り―――。



そして、大きく瞳を見開いた。










0
  • しおりをはさむ
  • 954
  • 943
/ 499ページ
このページを編集する