捧げ華~濁りの君よ~【完】

肆章 夜会ノ夜ニ語ルノハ


屋敷に戻った桜子は千鶴子の部屋を目指しながら一人、頭を抱えていた。



脳裏に巡るのは、まるで不思議なものを見るような目をしていた零の姿。



穴があったら潜りたい、というのはこういう心境なのかもしれない。



……あろうことか、華族に三度は逆らった。



さすがに―――まずいだろう。



名門華族の軍人将校。



その華々しい名に見劣りしない男の考えていることが、桜子にはいまいち理解できない。



普通であれば桜子などとっくに路頭に迷っていても不思議ではないのに、今もこうして出入りさせて貰っている。



散々文句を言っておきながら、何もしてこない零が少々不気味でもあった。



暗い気分のまま千鶴子の部屋の前に辿り着き、部屋の扉を叩くと中から「どうぞ!」という声が聞こえた。



扉をそっと開け、桜子は恐る恐る部屋の中を覗き込む。



「奥様。失礼しま……」


「桜子さん!ちょっと手伝ってくださる!?」


「はい?」



扉から顔を覗かせた瞬間、飛び出てきた千鶴子と部屋の様子に桜子はぽかんと口を開けた。











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