捧げ華~濁りの君よ~【完】

伍章 何カガ変ワリシ日々

子爵家の夜会から数日が経った。



良く言えば平穏、悪く言えば代わり映えしない日々。



そんな日常を送りつつ、今日は藤ノ宮家には寄らず、父から頼まれた絵を届けるために桜子は出版社へと向かっていた。



大判の封筒に入った原稿を抱え、家からさほど離れていない大通りにある出版社へと向かう。



暇だからという理由で佳世も同行し、到着するまでの道すがら、桜子は彼女に藤ノ宮家に出入りしていることを話した。



なんとなく話す機会を逃し、今頃になってしまったのは申し訳なかったが、佳世はそんな細かいことは気にしない。



「……はぁ?」



話を聞き終わり、佳世はきょとんと目を見開く。



「ちょっと、桜子?」


「うん?」


「あたし今、貴女が藤ノ宮家に出入りしてるって聞いたんだけど」


「……ええ」



こくりと頷く。



佳世は真顔で足を止めた。



そして、桜子の肩を掴み―――。



「桜子!貴女絶っ対騙されているわ!!」



往来のど真ん中でそう叫んだ。



「佳世……っ!?」



道行く人の視線を集めても、佳世は桜子の肩を揺さぶることを止めない。



「だって!なんで!どうしてよりにもよって藤ノ宮なのよ!おかしいじゃないの!轢かれたこと覚えてないの?死にかけたじゃないの!騙されてる、絶対騙されてるわ!」


「か、佳世……」



ガクガクと前後に揺すられつつ、桜子は慌ててその口を塞いだ。











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