透明な罠【完】

冷泉財閥




今日は久々にすっきりと目が覚めたから、あそこに行こうと思う。


“あそこ”というのは……



「あれ、和瑚?久しぶりだね!」

「久しぶり」

「んもー!留年しても知らないよ?」

「計算してるから大丈夫」



勿体ぶるまでもない。


ただの公共教育機関、即ち大学だ。


確かにこの子の言う通り、私がここに来るのは久しぶりだけど単位計算は完璧な為留年の心配は皆無。


成績も上々だ。




にっこりと笑ってこれ以上話しかけるなオーラを出しながら近くの椅子に腰掛けると、彼女もふーんと言葉を漏らしながら後ろらへんの席に座ったようだった。



カバンからルーズリーフとペンケースを取り出す。



「え、和瑚来てるの?」

「そうみたーい」

「まじかよ。また男でも漁りにきたわけ?」



きゃははは、と下品な笑い声がこっちまで響いてくる。


もう少し音量を控えたらどうか、と教えてあげてもいいんだけど、生憎そんな労力がこの体には残っていない。




そう。ここではどんなに友好的に話しかけられたとしても、所詮は見かけだけ。


ていの良いオトモダチというわけだ。

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