有川さんはめんどくさがり

面倒事その2




その日は突然やってきた。



「有川友葉さん、だよね?」



休み時間、私が教室を出るのを待ち構えていたかのようにかけられた声。


ゆるりと浮かべられた笑みはどことなく胡散臭い。



「そうだけど、なに?」



一瞬しらばっくれようとしたけど目の前の断定的な眼差しに諦める。


“男嫌い”という設定を忠実に守り、ゴミでも見るような目で冷たく言い放ったにも関わらず、男の笑みは一層深くなるばかり。


……こいつ、稀に聞く変態だろうか。


私は今変態なんぞに構っている暇はない。


購買のパンが売り切れるからと目にも留まらぬ速さで教室を出て行った友人を追いかけなくてはならないのだ。


こいつのせいで『なんで遅かったの?』などとめんどくさい質問をされるのは御免被る。


女子の知りたがり気質なめんなよ。こっちの事情なんて御構い無しに己の探究心が満たされるまで解放してくれないからな。



「ああ、良かった。この前チラッと見ただけだから違ってたらどうしようかと思っちゃったよ」



さっきの断定的な目とは一変、心底ホッとしたように笑う男。


こ、こいつ……!

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