タランチュラ 本編

「これは内緒だが、わしには娘が1人いる。でも、娘とは自由に会えないんだ。

 だから本当はこうやって何かしてやりたいが、何もしてやれないのだ」

「どうして?」

「わしに力がないからだ」

 国王は悔しそうな顔をした。

“コンコンコン”

 ドアをノックする音が聞こえた。

「もう時間がないようだ。今日は君たちと話ができてよかった。ありがとう」

 国王は俺たちの頭をわしゃわしゃ撫でた。

「君たちに少しでも多くの幸があらんことを…」

 国王はそう言って部屋を出た。部屋の外で『隠密部隊』と一言二言言葉を交わし、『歯車』の訓練棟を後にした。

 俺たちは精鋭棟に戻った。俺はこのとき、あいつとコンビを組んでいた。

 『精鋭部隊』になると、コンビで1部屋与えられる。だから、俺とあいつは同じ部屋で暮らしていた。

 備え付けのベッドとテーブル、イスしかないさっぱりした部屋だ。

 俺はベッドの上にさっきもらったお菓子を広げ、それを食べながらあいつとさっきの出来事を話した。

「あの赤いおじさん、王様だったんだね。
 俺、王様初めて見てびっくりしたよ」

 あいつは俺のベッドに俺の横に座って頷いた。

「優しい王様だったね」

あいつは頷いた。

「泣いてたね」

あいつは頷いた。

「俺たちのために泣いてくれる人って初めてだったよね」

あいつは頷いた。

「俺…あの王様、好きだな」

あいつは頷いた。

「また、来年会えるよね?」

あいつは頷いた。


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