タランチュラ 本編

第1章 /3)自己紹介



 流れの緩やかな川を見つけた。

 やや角のとれたまばらな大きさの石ころが転がっている浅い川の水は、まるでガラスを張っているかのように透き通っていた。
 今日中に街に着くのは不可能だと考えた一行はここで野営をすることに決め、川から少し離れたところにテントを張った。
 その側にはルゥが起こした炎が上がっている。
 お昼のお礼にとユサが自分の食料で晩御飯を作ってくれることになり、ルゥと晩御飯の仕度をしていた。
 
「ごめんなさいね、手伝わせちゃって」

 ユサが材料を炒めながらルゥに言う。

「気にしなくていいよ。うちはいつも僕が食事担当だから」

 ルゥが穏やかな表情で言う。会話するにつれてユサに対してのルゥの人見知りは、解消されたようだ。
 
「レンにやらすと、大変なことになる」

 ユサは食事を作ろうとするメチレンの姿を想像し、出会ってまだ時間は経っていないが、どんな『大変なこと』が起こるか、容易に想像できたので、苦笑した。

 ユサはメチレンに助けられたこと、そしてその後、本部に連絡してあの男を連れて行ってもらったことをルゥに話した。

「………」

 話の途中から、ルゥの返事がなくなった。何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうかと心配したユサだが、メチルの顔を見て、その理由に気づいた。
 玉ねぎを切っているメチルの目からボロボロ涙がこぼれていた。

「だ、大丈夫?!変わりましょうか?」

「…う…問題ない」

 ルゥは目をしばしば擦りながら、玉ねぎに悪戦苦闘していた。



 その頃メチレンは、ピヨ子とノヴァムと一緒に川にいた。
 靴を脱ぎ捨て、服の裾をめくり上げたメチレンはまだ肌寒い春にも関わらず鳥たちよりも元気だった。

「ピヨ子っ、そっち行ったよ!!」
『こ、…コゲっ?!』
「あっ、バカっ!!ノヴァムっ!!ってもぉー!!役立たずっ!!」
『……』

 川の中で凍ったように動かない鳥2匹にメチレンがつまらなそうにすねる。

「親子丼にして食っちまうぞ」

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