タランチュラ 本編

「レイン?!」

「「?!」」

 ウィンド大佐も驚いた。駆け寄ろうとするウィンド大佐を引きとめた。

「ウィンド、動くな!私はこの2人と話をしているのだ」

 初めてあの女が声を荒げた。

「っあっ!!」

 あの女は器用に自分の目玉をくり抜いて、手のひらに乗せた。つぶれた女の右目からゆっくり赤い涙が流れた。

「貴様たちにこれをくれてやる」

 女は自分の目玉を粗末に放り投げた。赤い目玉が地面に転がった。

 それを見て、あいつの刀を握る手が緩み、ペタっと膝から座りこむ。

「な…なんでこんなことするんだよ?!」

 俺たちは驚きと女への恐怖で混乱していた。

「この国に貴様たちは必要な人材だ。

 貴様たちは私のことを殺したいほど憎いだろうが、私にはこの国のためにするべきことがまだある。悪いが私はまだ死ねん。

 これが今、私ができる最大限のことだ。それで今は怒りを鎮めろ」

 あの女はそういうと、部屋の出口に向かって歩き始めた。

「レイン、待て!医療班を呼ぶ」

「そんなものはいらん!」

“バタン!”

 あの女とウィンド大佐が出て行ったあと、俺はあいつを抱きしめた。

 理性を取り戻したあいつは俺の胸の中で声を出して泣いた。

 あの女の目玉がこちらを静かに見つめていた。

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