タランチュラ 本編

第5章 /8)洪水警報

“ガシャーン!!”

レインは高く飛んで避ける。メチレンが振りかぶった剣は空を切り、螺旋階段の手すりから階段を破壊した。瓦礫が飛び散り、斬撃が螺旋階段を支える支柱に深い傷跡を残す。鞘に納めていた時とは比べ物にならないほどの威力だ。

レインは顔色を変えず、メチレンの背面に静かに着地し、そのまま突きを繰り出す。 

メチレンも間髪入れずに剣を横に振り払い、両手で剣を支え、サーベルの突きを剣の腹で受け止める。風圧が二人を中心に円状に広がる。

「ずいぶんとかわいらしい姿になったな、スイよ。攪乱のつもりか?
あれだけの事件を起こして逃走を図ったお前たちを我ら『隠密部隊』が野放しにしておくと思ったか。

貴様たちが自由に暮らせる場所など、この世界のどこにもありはしない」

力を込めるレインのか細いサーベルにメチレンが押される。普段馬鹿力を持つメチレンだが疲労とレインからの強烈な圧に後ずさる。
必死に押し返そうとするメチレンにレインが一旦後方に引いた。

「うわっと!

急に押されていた力がなくなり、バランスを崩して前に倒れそうになるメチレンだが、なんとか片足で耐えた。その瞬間をレインの鋭い一突きがメチレンの左肩を貫通する。

「っ!!」

メチレンが苦痛に顔が歪む。

レインがサーベルを引き、メチレンが後方に飛んだ。

「いったいなー」

露出している肩から血が流れ、白いトレーナーが赤く染まる。左腕が上がらず、ダランと垂れる。

「外したか…」

急所を外したことに不服そうなレイン。

「次はこうはいかんぞ」

レインがサーベルを構え直す。

左肩がズキズキと痛むだけでなく、腕が動かせないため、重りがぶら下がっているような状態。体幹のバランスが取りにくい。右手しか使えなくなった今、圧倒的に不利な状態に下唇を噛む。

一層のこと、この邪魔な左腕を切り落とすか?

思考を巡らせるが、レインは待ってくれない。間一髪のところ一撃を避け、大剣の腹で突きを防ぐ。

反撃のチャンスを探すが、鋭い攻撃を連続技を繰り出すレインにメチレンは押されていた。

「その程度か」

激しい突きを繰り出しながらレインが鼻で笑う。

「貴様に守れるものなどありはせんのだ!」

レインの強い突きに、避けて防ぐのに精いっぱいだったメチレンが動く。

「うるせぇぇえええええ!!」

大剣を盾にして受け身となっていたメチレンだったが、剣を盾にレインに向かって突っ込み、サーベルの突きが乱れた瞬間、レインのサーベルを薙ぎ払った。

“カランカランカラン…”

レインの手からサーベルが弧を描いて離れた。そのままメチレンはレインの体を剣の腹で押し、レインを壁際に追いやる。刃はレインののど元に押し付けられ、身動きが取れない状態である。

「あの日、もう殺しはしないって決めたんだ!二度と俺たちの前に現れないと約束するなら逃がしてやる」

メチレンがレインをにらみつける。

「…ふふ、はっはっはっはっは」

レインが笑う。

メチレンはレインが笑ったところを初めて見た。とても不利にある状況にいる者の態度ではない。

「私と取引をしようというのか!笑わせるな!!」

レインが怒鳴る。凄まじい怒りのオーラだった。

「我々は貴様をそのような腑抜けに鍛え上げたつもりはない!殺すつもりはないなら、こちらが殺す!」

レインはそういうと、メチレンを蹴り押し返した。不意を突かれたメチレンはもともと左右のバランスが取りにくい状態だったため、無様に尻餅をついた。

メチレンからの密着を離れたレインは、腰にさしていたもう一本の護身用の短剣でメチレンに襲いかかろうとした。

その瞬間…

“ゴゴゴゴゴゴゴ”

大きな地響きと音が起こり、急なことにレインも膝をつく。

「な、何事だ!!」

「うわ、うわ、うわ!なになになに?!」

状況を把握できるものはここにはいなかった。

ホールにいる者たちがたじろいでいると、複数ある扉のうちの一つが勢いよく突然開いた。

“ガタガタガタガタガタ…バタン!”

突然開かれた扉には地下への階段があった。扉が開いたかと思った次の瞬間、

“ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴぉぉおおおおおおお!!”

大量の水が津波のように湧き出してきた。

「う、うそだーーーーーーーー!!!」

「な、なんだと!??」

メチレン、レイン、そしてレインの部下たちは水に飲みこまれてしまった。

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