タランチュラ 本編

第5章 /9)再開



大量の水とともに古城から流され、お日様の光を頭のてっぺんから浴びるメチレン。城の外だが門の中だろう。高い外壁に囲まれ、街は見えない。

ビショビショの体。膝をついて上体を起こす。

「一体何が起きたの?」

辺りを見回すと同じように水流に流されたレインがメチレンとほぼ同時に体を起こした。二人の距離は視覚で捉えられたが、お互いの間合いに入っておらず、視線をはずさず警戒を怠らない。

メチレンはここで初めてズキズキ痛む左肩を押さえる。止血を怠ったこともあり血が流れ続ける。

「あールゥの愛があれば…」

足りないのは愛だと自分に言い聞かせる。

「あれ、そういえばルゥは?さっきの大洪水で流されたんじゃあ…」

辺りをもう一度見渡す。

「え、え、え…確か、地下牢で幽閉って言ってたよね!あの水、地下から上がってこなかった???」

メチレンの顔色が一気に青ざめる。ぷか~と牢屋の中で浮いたルゥの姿が頭をよぎった。

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!」

左肩を押さえて血まみれになった手で剣を持つと剣を支えに立ち上がり、古城に向かって走った。点々と血が落ちる。

「やい、レイン!一時中断、中断!どうせさっきので武器、流れちゃっただろ!追いかけてくんなよ!ばーか!ばーか!」

メチレンはレインに向かって叫んだ。

水が引いたエントランスホールに戻ると、天井まで濡れており、ポツリ、ポツリと水滴が至るところで落ちてきた。

メチレンは水が上がってきた扉の前に急ぐ。

階段は水没している。もともと薄暗い城内のため、階段の下がどうなってるか見えない。

「ル、ルゥゥウウー!」

メチレンが叫ぶ。

「ブゥゥウウウー!!」

顔を水の中に突っ込んで叫ぶと、ボコボコと泡立った。メチレンは顔をあげ、袖で顔を拭く。

「よし!潜るか!」

メチレンはスッと立ち上がり、服を脱ごうとした。左腕が使えないので手間取る。その時、

〝ブクブクブク〝

水面から泡が浮いてきた。

「ル、ルゥなの?」

メチレンは脱ぐのを一旦やめて水面を覗きこんで視線を集中させる。

ドキドキ

「プハぁぁあああッ!」

上がってきたのは期待外れのロスメタだった。水上に上がってきたが水中で乱れた長い髪で前がよく見えていない。

右手にはルゥの白いベレー帽が握られている。

メチレンは下唇を噛みしめて右手でロスメタの襟首を締め上げた。

「なんでお前なんだよ!ルゥは!?

手に持ってるの、ルゥの帽子じゃん!!」

〝ズルズルズルゥ〝

ロスメタを引きずりあげてからだを激しく揺らし、ロスメタが呻き声をあげる。

「ぅう」

「ゲホッゲホッゲホッ」

「ほぇ!?」

ロスメタではないむせこみが聞こえた。

ロスメタの左手にはルゥの手が握られおり、メチレンがロスメタを引き上げると同時にルゥも水上に引き上げられたのだ。

「おおおおおおお!!!ルゥ!ルゥ!ルゥっ!」

0
  • しおりをはさむ
  • 9
  • 0
/ 151ページ
このページを編集する