タランチュラ 本編

第5章 /10)交差する想い

メチレンはロスメタを締め上げた手を放した。

「ゲフッ」

〝ドサッ〝

ロスメタが落とされる。倒れいるロスメタとルゥの手を無理やり引き剥がし、ロスメタを乱暴に投げ飛ばした。そしてルゥを右手で抱き上げた。

「ルゥ!わかる!?」

メチレンの膝の上でうっすら目を開ける。

「レ、レン…」

メチレンの目に涙が浮かぶ。

「心配したんだからね!無断外泊はもうダメだからね!」

ルゥが力なく笑った。

「ご、ごめん…下手こいて牢屋に閉じ込められたんだ…。
水圧で牢屋を壊して逃げようとしたら思ったよりたくさん水を召喚しちゃった」

少し息が上がる。
ルゥの頭をメチレンは撫でた。

「出口探してたら迷子になっちゃって…息が続かないって思ったら、ロスメタが変化の魔法で魚になってくれて…」

「魚?」

メチレンに投げられて倒れているロスメタを見ると、下半身が魚の尾になっていて。

「うぉ!人魚じゃん!!」

ロスメタに関心がなかったメチレンはその時初めてロスメタが変化の魔法を使っていたことに気づいた。

「メチレン…そ、そんなことより、あいつが!あの女が!」

溺水からやっと少し息が整いはじめたルゥが上体を起こし、メチレンの服の裾を掴んで訴えようとして、メチレンの怪我に気づく。

「レン!怪我してるの!?ま、まさか…あの女に?」

あー、やっぱりルゥはレインがここにいることを知っていたのかーとメチレンは目を反らしながらため息をついた。

ルゥはレインに対して強い憎悪を抱いている。それは自制心を、理性を失わせるほどの強い憎悪。

ルゥをこの戦いに巻き込みたくなかったメチレンは、ルゥを刺激しないように慎重に声をかけようとした。しかしルゥがそれを遮る。

「レン、お願い!あの女と…レインと戦わないで!!」

メチレンは困った顔をする。それは、ルゥが戦うから手を出すなと言う意味だと思ったからだ。

「わ、私、地下であの女に会ったの!もう頭の中パニックになって、また理性が飛びそうになったの」

「やっぱり…」

メチレンは眉を潜めた。やはり簡単にルゥの心の傷、憎しみは癒えないか…。

「でも、メチレンのことがすぐ思い浮かんだの!メチレンの元へ帰りたい!もう人を殺すのをやめようって一緒に誓った今の楽しいメチレンとの暮らしに帰れなくなるのは嫌だ!って…」

「ル、ルゥ…」

メチレンは目を見開いた。

「だから、ずっと追われる立場になるかもしれないけど、逃げよう!私、メチレンと一緒ならそれでいいの!」

ルゥが真剣な眼差しで訴えてくる。メチレンはルゥの心の変化に気づけていなかったのだと知った。

「メチレンもあの女のことは許せないと思う!で、でも、お願い!あの女と二度と関わらないで!!」

ルゥは必死にメチレンに訴える。

「どうしても…どうしてもメチレンが許せないって思うなら、その時は私が代わりにあいつを殺す!

だから、レンは…メチレンは手を出さないで!

お願い…もうこれ以上傷つかないで」

ルゥの必死の説得。お互い、お互いを思いやりすぎたんだと知った。メチレンはルゥを強く抱き締めた。

「うん、一緒に逃げよう!俺、ルゥとずっと一緒がいいもん!」

ルゥもメチレンを抱き締めた。

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