タランチュラ 本編

最終章 /3)真相

「まぁ、あれだ!貴様が勝手に暴走し、私たちはそれに乗っかった…というだけだ」

「…は?!」

「だーかーら、三年前、タランチュラの事件の騒動をきっかけに貴様は王女を連れて逃げ出したのだろう?私がそれを把握していないと思ったか、このうつけめ」

ロスメタは開いた口が塞がらない。

「本来はそれは前国王より、私が仰せつかった事…。私がやろうとしたことを貴様が勝手にやったということだ」

若干呆れた様子なレイン。

「貴様、逃げる間追っ手が来ないことに疑問を抱かなかったのか?」

「いや、思いましたが、まさか…」

「そうだ、貴様たちは守られていたのだ。貴様を排除して王女を我が隊で保護することも可能であったが、それではこれまでの不自由な身と変わらん。

だからお前の粗雑な策に乗っかって、お前に保護させた。村でも必ず見張りは付けていたしな」

レインから語られる自分が知らなかった事実に言葉がでない。

「だが村を出るとなれば、こちらも守りきれるとは言い切れない。どうしたものかと思ったところに、ある女からの提案を受け、今回このような形で私が表に出ることになったのだ」

「提案?」

「ある条件と引き換えに、ロスメタ王女の護衛を頼んだ」

「?」

それはロスメタのお役目ごめんということか。

「貴様では今後、村と言う限られた空間ではない広い世界で王女を守りきれんだろうし…と思って王女に話したら…」

「そんなのはいりません!」

レインの言葉をユサが遮った。

「記憶は戻ったけど私はもう王女ではないし、こんなキラキラワクワクした世界を自由に旅をできる幸せはないわ!護衛なんてつけられたらそれは自由じゃないわ」

「…と、言うことで王女が護衛を断った。貴様もお役目ごめんだな」

「あ…」

ユサがハッとした顔をする。

「そうだった…ロスメタはレインさんの部下だものね。私、少し勘違いしてた。ごめんね、ロスメタ。もう自由だよ!」

ユサは寂しそうな顔をした。ロスメタも複雑な表情をしている。

「「………」」

黙ってみつめあう二人をレインはため息をついて止めた。

「あー…、こやつはもう私の部下じゃありません。三年前、殉職手続きをとっていますし、王女の抹殺届けも出していますので、両名死んでますので追われることはないでしょう。

ですから、これからのことはご自身の責任となりますが、ご自身の意思でご自由になさって下さい」

ユサとロスメタがキラキラした目でレインを見る。

「さて、私はこれで失礼します」

ユサに敬礼をするレイン。

「「ありがとうございます!」」

ユサとロスメタが手を繋いで喜んだ。

「でもレイン大佐、こんなことして大丈夫なのですか!隠密部隊が許さないでしょう…」

ロスメタの問いにレインは伸びをしながら答えた。

「そもそも私は今、隠密部隊じゃないし、大佐でもないしな」

「えっ!?」

「まぁ正確には隠密部隊の末端だがな。

しかも今私は休暇中だ。タランチュラだの死んだはずの元王女だの裏切り者など近くにいようがいまいが知ったことではない」

「か、変わりましたね」

あまりに砕けているレインに苦笑するロスメタ。

「私が唯一従うのは前国王のみ。前国王の意に反することが起きるとき、それはまた私が表舞台にでるときだ。

それが来ないことを祈りながら私は隠居生活を楽しむよ…」

そういうとレインは立ち上がり、ユサの前で膝間付いた。

「ロスメタ王女、これまでの数々のご無礼の段、深くお詫び申し上げます」

ユサが慌ててレインを起こそうとする。

「レインさん、やめてー!こちらこそ今までありがとう!あなたにはいつも助けられてばかり」

「勿体ないお言葉です」

「本当よ!子供の時からずっとだもの!レインさん大好きっ」

ユサはレインに抱きついた。レインはユサの頭を優しく撫でた。それはまるで仲の良い姉妹のようだった。

「え、え?」

あまりにフレンドリーな二人の関係にロスメタは戸惑うことしかできなかった。あの恐ろしい殺気を放つ軍人の姿はそこにはなかった。

「レインさんは、私と同い年くらいの妹さんがいるんだけどね、なかなか仕事も立場もあって構ってあげられなかったんだって。

だからこの分、昔っから私の事気にしてくれてね、あまり会えないお父様との間に入ってくれたり、私の相談にいつでも乗ってくれて、私も本当のお姉様だと思って甘えてたのよね」

「ええー!!」

お世話係兼見張りのロスメタが知らない事実に驚く姿を見て、レインは「ははっ」と笑った。

「それでは私はこれで失礼致します。何か困ったことがあればいつでも駆けつけます故…」

そう言って部屋を出ていこうとしたレインが足を止め、ロスメタに耳打ちする。

「タランチュラの子どもには私の事は口外するなよ。あやつらには追われているという圧でもかけておかねばならん…怠けての垂れ死なれては困るからな」

一瞬、いつもの殺気を放ち、ロスメタが後ずさる。

「はっはっはっはっは」

笑いながらレインは去っていった。

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