タランチュラ 本編

最終章 /5)家族風呂



「あー気持ちよかった~」

「はぁ、幸せ」

湯気を出しながらメチレンとルゥが浴衣姿で食堂にむかう。

「やっぱり部屋のシャワーだけじゃ物足りないよね」

部屋に戻ったあと、さっと部屋のシャワーで汗を流し、昼寝をした二人だったが、温泉に入りたいというルゥの要望を叶えるため、貸し切りを申し出たが断られた。しかし、宿の家族風呂が空いていたのでそれを借りた。

家族風呂とは、大浴場のような広いお風呂ではないが、貸し切りにできるお風呂のこと。施設によって室内風呂や露天風呂など種類豊富だ。

「前みたいに貸し切りにしなくても、家族風呂ってシステムがあるんだね!素晴らしい」

初めて家族風呂に出会ったルゥは感動しているが、メチレンは物足りないようだ。

「んーお風呂小さいよぅ。やっぱり私は広い方がいい!泳ぎたいもん」

「いや、お風呂ではいつも泳いじゃダメって言ってるじゃん」

「ケチー!じゃあ次から一緒に入ってよ!そしたら大人しく我慢できるよ」

「ぜーったいヤダ!」

「ケチー!」

プイッとお互い顔を背けたところで、声がかかる。

「メチレーン、ルゥー」

ユサだ。ロスメタも一緒にいる。

「あ、ユサ!ロスメタも」

「やぁ」

二人も浴衣姿で頬を赤らめていた。

「ユサたちもお風呂はいったの?」

「ええ。とっても気持ちよかったわ。メチレンたちも?」

「うん、今さっき」

「えーそうなの?私たちもよ。一緒だったのに気づかなかった!メチレンと背中の流し合いっこしたかったなー」

「「………」」

メチレンが男だと知っているルゥとノヴァムが一瞬黙る。だが、メチレンは慣れているのか、笑顔で返す。

「本当だねー!それ、楽しそう!

でも、私たちは家族風呂に行ったんだー」

「そうなのー?大浴場、おっきくてメチレンなら泳ぎた~いって喜ぶと思ったのに」

よく分かってるなーとルゥは苦笑した。

「うん、私もね大きいお風呂に行きたかったんだけど、ルゥが一緒がいいって言うから。

もぅ!ルゥのえっちー」

メチレンはポッと顔を赤く染めた。

「え、え、え、一緒に入ったの?」

「そうだよ、だって夫婦だも…ゴフッ!」

言葉が終わる前にメチレンはうずくまっていた。

「嘘を言うな!」

久しぶりのルゥの鉄槌。

「て…照れちゃって」

弱々しくウィンクを飛ばすメチレンにルゥは拳を震わせる。

「ま、まだ言うか~」

「ははは、仲良しね」

「ひゃぶひゃぶだひょー」

ラブラブだよーと言っている。

ユサは二人のやりとりに慣れたのか微笑ましく見ているが、メチレンの頬は餅のように伸びていた。

「さっ!し、食事にしよう!」

二人のやりとりにまだ慣れていないノヴァム。と、いうより、やっぱり最強の殺し屋と呼ばれるタランチュラが目の前でこんな漫才みたいなことをしていることが信じられない。話題を変えるしか、彼らを止めることしかできなかった。

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