タランチュラ 本編

最終章 /8)ブロモチモールとレイン



「姉さんたち、なんでうちに来るんです?」

エーテルはため息を付きながら、二つのティーカップを用意した。

一人は銀髪の実の姉。もう一人は金髪の姉貴分だった。

「レニウムちゃん、そんな冷たいこと言わないで~殺しちゃうぞっ☆」

金髪のウェーブがかった髪の長い女が笑顔でウィンクする。しかし目は笑っていない。

白い肌に、ややつり上がった大きな青い瞳、整った顔立ち。服の上からも分かる福よかなバスト、細いウェスト、長い足。すべての外見は完璧なのに、彼女の唯一で最大の欠点は性格が悪いことだった。

「リティアム、うちの妹に殺意を向けるな」

銀髪の女が向かい合わせに座っている。

「それに、レニウムではない。今はエーテルだ」

「あら?じゃあ私はリティアムじゃないわ、ブロモチモール・ブルー様よ、覚えなさいよね」

金髪と銀髪が睨み会う。その場にいるエーテルは逃げ出したいほど、最悪な空気だ。

「ま、とりあえずお茶でも飲みましょう!お菓子もありますし!」

エーテルは自分で振った話題から二人の客人が殺し合いを始めそうな雰囲気を和ませようと必死になった。

「いっただきまーす」

ブロモチモールと名乗った女は出されたお菓子を嬉しそうに遠慮なくパクパク頬張る。その姿を見て、エーテルは思わず笑う。

「何?」

お菓子を食べながらブロモチモールはエーテルを睨み付ける。

「ごめんなさい、スイにそっくりだったから…あれ?姉さんスイと面識あったかしら?」

「あー、そうだろうね。あれ、私の弟だから」

「あぁ、道理で。顔も似てると思ったって…………えーーー!!!」

エーテルは驚き、叫ぶ。

「うるさい」

「そういえば、昔、姉さんにスイとサンについて調べさせられたことがあった!あれってそういう意味だったの?」

「そうよ、何?今頃気づいたの」

ブロモチモールはお菓子を片手に小バカにしたように笑った。それを聞いて銀髪の眉がピクリと動く。

「あ、やばっ」

ブロモチモールが目をそらす。そしてエーテルが青ざめる。

「……良かったな、歯車および隠密の情報漏洩は死罪に値するが…今の私は管轄外だ、目をつむろう」

「さっすが、レインちゃん!話が分かる~」

銀髪のレインの肩をテーブル越しにブロモチモールは叩いて笑い飛ばした。

金髪の女、ブロモチモール・ブルーはかつて歯車に所属し、最強と呼ばれたタランチュラの前の代の最強の殺し屋バタフライ。その実力はタランチュラを勝ると知る人のなかでは語り継がれているが、世間に彼女の存在を知るものはいなかった。

彼女は数々の伝説を作ったが、この中で最も有名なのが唯一歯車を脱走できた人物なのだ。

彼女とレインは歯車と隠密という異なる立場であったが、今は友人という関係になっている。

「さー本題に入りましょう!今回は私のお願い聞いてくれてありがとう」

ブロモチモールが言う。

「で、タランチュラはどうだった?元気にしてた?」

「ああ、少しまだ詰めが甘いが、なんとかやっていた」

「そうなんだー、良かった。

殺す殺すって言ってたらどうしようかと思ったわー」

ブロモチモールは嬉しそうに紅茶を飲んだ。

「いやーあいつらが歯車抜け出したあと、かくまったんだけどさー、根っからの殺し屋じゃない?更生させるの大変だったんだから!」

ブロモチモールは笑いながら話を続けた。

「お金がなくなったらどうするかって聞いても、お腹がすいたらどうするかって聞いても、なに聞いても答えは殺して奪うってしか答えないんだもん。嫌になっちゃったわよ」

ブロモチモールは一呼吸ついて、ポケットから一枚の写真を取り出し、微笑んだ。写真には若きブロモチモールと赤髪赤目の青年が写っていた。

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